【Law Practice 民事訴訟法】基本問題2:裁判所の審判権

Law Practice 民事訴訟法
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1 宗教法人山和寺はAに対して、山和寺の境内地の明渡請求(以下「本件本訴請求」という)をしている。これに対して、Aは反訴として宗教法人山和寺に対して、Aが山和寺の住職の地位確認請求(以下「本件反訴請求」という)をしている。 

2 訴えが「法律上の争訟」(裁判所法3条1項)に当たらない場合には、裁判所の審判権が認められないため、訴え却下判決をしなければならず、本案判決を行うことはできない。そのため、本件本訴と本件反訴が「法律上の争訟」に当たるかを検討する。 

(1) 「法律上の争訟」とは、①当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって、②法令の適用により終局的に解決できるものをいう。 

(2) ア 本件本訴請求について 

(ア) 本件本訴請求の訴訟物は、所有権(民法206条)に基づく山和寺境内地の明渡請求権であるため、具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争といえる。 

(イ) しかし、本件本訴請求の基礎には、以前住職だったAが擯斥処分事由に該当する行為をしたことが原因で僧侶の身分が剥奪され、それにより、Aが山和寺を占有する権原を喪失したこと、また、これに伴い、新たに住職となったBに占有する権原が渡ったこと、が前提事項として存在している。 

 そのため、本件本訴請求の当否を裁判所が判断するに当たっては、Aがアルバイトとして僧侶養成通信講座の講師として受講者に有料で僧侶の資格を授与していたことが「教義に異議を唱えて宗門の秩序を乱した」(恵信宗規程参照)といえるかの判断を行うことが不可欠の前提をなしているといえる。 

 そして、その判断は、恵信宗の「教義」たる「釈尊恵信の法門を伝承した開祖大和禅師一流の禅愛一如」の内容についての解釈や、恵信宗内部の「宗門の秩序」がいかなる態様であるかについての調査が必要であり、教義や信仰の内容に立ち入った判断が要求されるものである。それならば、本件本訴請求は法令の適用により終局的に解決できる性質のものではない。 

(ウ) よって、本件本訴請求は「法律上の争訟」に当たらない。 

イ 本件反訴請求について 

(ア) 本件反訴請求は、住職としての地位を確認する旨の請求である。住職という地位は、宗教法人山和寺の規則において、代表役員という法律上の地位の前提をなす資格である。 

 そうだとしても、住職という地位それ自体は宗教上の地位にすぎず、法律上の地位ではない。そのため、当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であるとはいえない。 

(イ) よって、本件反訴請求は「法律上の争訟」に当たらない。 

3 以上より、裁判所は本件本訴請求、本件反訴請求について、本案判決をすることができない。 


 本件反訴の確認請求については、確認の利益(特に対象選択の適切性)を欠くとして訴訟要件欠缺を導く法が適切?(最判昭和44年7月10日参照) 「法律上の争訟」性を欠く場合の体系的な処理がイマイチわかりません。

 ここで「法律上の争訟」性が認められないという結論を導くことで、B側(山和寺側)としては泣き寝入りをするしかなくなる、自力救済を行わざるを得なくなる、という問題点が生じる。この点については、「法律上の争訟」性を否定する立場からは、①教義や信仰の内容に立ち入った判断が必要となる擯斥処分を行った以上は、訴え却下判決とされるのも宗教組織の自己責任といえること、②教義や信仰の内容に立ち入った判断が要求されない「剥職処分」によれば本案判決を得られたであろうこと(抜本的解決の途が閉ざされているわけではないこと)、を述べると思われる(最判平成21年9月15日参照)。

 住職の地位は法律上の地位とはいえずとも、法律上の地位である代表役員としての地位の基礎を構成する地位であるため、紛争の抜本的解決のために「法律上の争訟」性を肯定すべきという見解に対しては、直截的に代表役員としての地位を確認対象とすべきであり、それで足りる、と反論することになりそう(最判昭和55年1月11日参照)。

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