【Law Practice 民事訴訟法】基本問題3:忌避事由

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1 XはB裁判官が控訴裁判所の裁判長として判決を下したことが「法律により判決に関与することができない裁判官が判決に関与した」ことを理由として、上告する(民事訴訟法312条2項2号)ことが考えられる。

その理由が認められる場合には上告が認められると考えられるため、その理由が認められるかについて検討する。

2 法律上裁判官が判決に関与できないとされている場合としては、除斥事由(民事訴訟法23条1項各号)に該当する場合と、忌避事由(民事訴訟法24条1項)に該当する場合とが考えられる。

(1) B裁判官は訴訟当事者たるYの訴訟代理人であったC弁護士の養父(C弁護士の配偶者の父)という身分関係を有していた。この身分関係は除斥事由(民事訴訟法23条1項各号)には該当しない。

(2) 裁判官について「裁判の公正を妨げる事情がある」場合には、当事者の申し立てにより、当該裁判官が忌避される(民事訴訟法24条)。それでは、B裁判官の身分関係は「裁判の公正を妨げる事情」となるか「裁判の公正を妨げる事情」の意義が問題となる。

ア 民事訴訟法24条の趣旨は、裁判制度を正当な形で運営し、国民の信頼を確保するためには、国民の視点から見て、公平性を厳格に保持できる状況にあることが必要であるため、そのような外観上の公平性を確保する点にある。

そこで、「裁判の公正を妨げる事情」とは、裁判官が不公正な裁判をするおそれがあるのではないか、という疑いを国民に抱かせる客観的事情をいうと考える。

イ 一般的に、自身の子の配偶者に対しては、自身の子に近い対応をするものであり、その者の職務に関しては、親として期待や応援の気持ちを抱いているのが通常といえる。そのため、自身の子の配偶者の職務に対して、自身が助力できる場合には助力するのも当然といえる。

自身の子の配偶者である弁護士が自身が裁判長を担当する事件に関わっている場合にも同様に何らかの助力をするのも当然といえ、それが有利な判決、事実認定、法の解釈を行うことに及ぶ可能性も否定できない

それならば、本問のような身分関係が存する場合には、裁判官が不公正な裁判をするおそれがあるのではないか、という疑いを国民に抱かせる客観的事情があるといえる。

ウ よって、B裁判官の身分関係は「裁判の公正を妨げる事情」となる。そのため、B裁判官は当該裁判から忌避されるべきである。

3 Xは「裁判官の面前において弁論をし」たため、裁判官を忌避することができないとも思われる(民事訴訟法23条2項本文)。しかし、X及びAが忌避事由の存在について知ったのは控訴審判決後であったため、控訴審判決前に「忌避の原因があることを知らなかった」ものである。それならば、上記事情により、忌避事由が消滅するものではない(民事訴訟法23条2項ただし書)。

4 B裁判官が控訴裁判所の裁判長として判決を下したことが「法律により判決に関与することができない裁判官が判決に関与した」という理由が認められるため、Xの上告は認められる

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