【事例演習 刑事訴訟法】17:科学的証拠

事例演習 刑事訴訟法
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第1 DNA型鑑定の結果について

1 本問事案において、DNA型鑑定の結果の証拠能力を認めるための要件を検討する。本問では、DNA型鑑定の結果について証明事実に対して必要最小限度の証明力たる自然的関連性が認められることが必要である。

(1) 科学的手法によって得られた情報に必要最小限度の証明力が認められるかは、その基礎となる事実の確実性や信頼性に求められる。

そこで、科学的手法による捜査によって得られた証拠は、①科学的原理が理論的正確性を有していることを前提とした上で、具体的な実施の方法について、②一定の水準の技術を習得した者によって、③科学的に信頼される方法で行われ、④鑑定対象の保存状態が良好であること、が認められる場合に、自然的関連性が認められると考える。

(2)ア DNA型鑑定は、同一人の細胞内のDNAに同一性、終生不可変性があることに着目して、人の細胞内に存在するDNAの塩基配列を鑑定の対象として個人識別を行うものをいう。そして、今日においては、この科学的原理が理論的に正確といえる水準に至るまで精緻化されていると評価できる(①要件はみたされている)。

イ よって、②〜④の要件をみたす場合に自然的関連性が認められる。

2 したがって、DNA型鑑定の結果の証拠能力を認めるための要件は、②’本問事案でDNA型鑑定を行った者が一定の水準の技術を有していること、③’科学的信頼を害する特段の事情がなく、科学的に信頼される方法で行われたこと、④’被害者Vの爪の中に遺留された細胞片の保存状態が良好であること、がみたされることである。

第2 臭気選別結果について

1 本問事案で臭気選別結果の証拠能力を認めるための要件を検討する本問において自然的関連性が認められるか

(1) 臭気選別とは、犯罪捜査過程において、犯行現場に遺留された物に残った犯人の体臭を犬に覚えさせ、それと同じ臭気を持つ物を選別させることによって犯人の同一性を判別する捜査手法をいう。

臭気選別における科学的な原理は不明であるものの、犬の臭気選別能力が優れていることは経験則上明らかである。その経験則に基づく正確性に加えて、信頼性が担保できる要素があることが求められる

そこで、臭気選別結果は、①専門的知識と経験を有する指導手が、②臭気選別能力に優れ、選別時において体調等も良好で、その能力がよく保持されている警察犬を利用して実施したものであるとともに、③臭気の採取過程や臭気の選別方法に不適切な点がないことが認められる場合に、自然的関連性が認められると考える。

(2) 本問では、以上の①〜③の要件がみたされる場合に、自然的関連性が認められる。

2 したがって、本問事案で臭気選別結果の証拠能力を認めるための要件は、上記①〜③の要件がみたされることである

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