【Law Practice 民事訴訟法】基本問題11:任意的訴訟担当

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1 B銀行は、任意的訴訟担当という形で、本件債券保有者のためにA国に対して債券元利金支払請求の訴えを提起している。それでは、B銀行に原告適格が認められるか明文なき任意的訴訟担当が認められるかが問題となる。(メモ:この前に、本件債券保有者の固有の当事者適格、授権について認定しておくべき)

(1) 弁護士代理の原則(民事訴訟法54条1項)、訴訟信託の禁止(信託法10条)の趣旨は、非弁活動によって、当事者の利益が害されるのを防止し、司法制度の健全な運営を図る点にある。それならば、任意的訴訟担当を行う合理的必要性があり、かつ、前述の趣旨に反しないのであれば、これも許容されるとすべきである。

そこで、明文なき任意訴訟担当も、①これを認めるべき合理的必要性があり、②弁護士代理の原則、訴訟信託の禁止の趣旨を回避・潜脱するおそれがない場合には許容されると考える。

(2)ア A国が債券の元利金の支払をしなかったことから、本件債券保有者は、それぞれ個別にA国に対して、元利金返還請求をすることが考えられる。しかし、本件債券保有者がそれぞれ訴えを提起するよりも、例えばB銀行が担当者として一律に訴訟追行した方が、被告や裁判所に対して生じる負担が回避できる

また、本件債券保有者に関しても、個別に訴訟に関する資料を集める必要がある場合には、訴訟追行の負担が大きく、紛争解決が期待できないこともある。しかし、専門家たるB銀行にその訴訟追行を任せられるのであれば、そのような負担から解放される。

以上の利益にかんがみると、B銀行が担当者として一律に訴訟追行することには、合理的な必要性がある

イ 銀行は一般的に国債に関する紛争について、高度な専門的知識を有している。また、B銀行は特に、自らが権利の発生に密接に関与した上で、その後債券管理会社としての役割を果たしているため、権利主体たる本件債券保有者と同程度、もしくはそれを凌駕する程度に権利関係について熟知している。それならば、B銀行が権利主体たる本件債券保有者の利益を専門的見地から実現し、訴訟手続の円滑な進行に資することが期待できる

また、銀行は一般的に銀行法等の厳格な規制に服しており高い職務倫理のもとで職務を行うものである。特に、B銀行については本件債券の保有者に対して、裁判上・裁判外での善管注意義務や公平誠実義務を負うものである。それならば、B銀行が被担当者の利益に沿った訴訟追行を行うことが期待できる

それならば、弁護士代理の原則、訴訟信託の禁止の趣旨を回避・潜脱するおそれがないといえる。

(3) したがって、B銀行が任意的訴訟担当を行うことも許容されうる

2 任意的訴訟担当が認められるためには、被担当者から訴訟担当者への授権が必要である。本問事案において、本件債券保有者からB銀行に対する授権はあるか

(1) A国とB銀行との間には、管理委託契約が結ばれており、その内容には、B銀行が本件債券保有者のために債券保全のために必要な一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有することが含まれていた。これは、債券保全等に関する紛争が生じた場合には、本件債権保有者は訴訟追行権をB銀行に対して授権する旨を示すものである。

(2) そして、このことは、本件債券それ自体や、目論見書にも記載されていた。それならば、本件債券保有者はB銀行に対して明示または黙示の意思により訴訟追行権を授権していると捉えるのが相当である。

(3) よって、本件債券保有者からB銀行に対する授権はあると考えられる

2 以上より、B銀行が任意的訴訟担当を行うことも許容され、B銀行に原告適格が認められる

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