【Law Practice 民事訴訟法】基本問題16:弁論準備手続

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第1 設問(1)について

1 本件弁論準備手続において,Yは以前の陳述の際に,XY間での口頭のやりとりがあったことを前提としているが,その後,口頭のやりとりの存在を否定する立場に転換している。

XはYのこの立場の変更を踏まえて,口頭弁論期日において,Yの陳述の信用性が低いことを主張するため,本件弁論準備手続内での以前の陳述の内容を逐語的に文書にしたものを書証として提出するものである。このような書証は認められるか

(1) 弁論準備手続(民事訴訟法168条)の趣旨は,当事者双方の協力の下で,円滑かつ活発な争点整理を行うことにある。それならば,弁論準備手続内においては,陳述に関しての撤回の余地を認めることで,当事者双方が主張を行うにあたって過度に慎重になることを防ぐ必要がある。

弁論準備手続内で矛盾する言動を行ったり,矛盾する態度を示していたとしても,その矛盾する言動や態度を供述等の信用性を失わせる証拠として用いることは,当事者の主張を過度に慎重にしてしまい,弁論準備手続の趣旨を損ない,本来の目的を達成することを困難にするおそれがある。

そこで,弁論準備手続内においての矛盾する言動や態度を証拠として用いることはできないと考える。

(2) 本問においても,XはYの弁論準備手続内における陳述を文書としてまとめたものを証拠として用いることはできない。

2 以上より,裁判所は本件書証を認めるべきではない

第2 設問(2)について

1(1) 弁論準備手続において争点整理を行ったにもかかわらず,その終結後に新たな攻撃防御方法を主張することは,争点整理の結果を無意味にするものであり,適時提出主義(民事訴訟法156条)に反する。

そこで,弁論準備手続終結後に新たな攻撃防御方法を提出した当事者は,「弁論準備手続終了前にこれを提出することができなかった理由を説明」する必要がある(説明義務。民事訴訟法174条,167条)。

(2) 本問では,Yは弁論準備手続終結後に,請負代金減額請求(民法632条,559条,563条)の主張を新たに提出しているため,弁論準備手続においてその主張を提出できなかったことについて説明義務を負う。そして,Yはこの説明を拒否しており,説明義務に違反している。

2 Yに説明義務違反があるとしても,説明義務の不履行に対する直接的な制裁は規定されていない。そのため,裁判所はYの本件主張を却下することはできないとも思える。

3 そうだとしても,裁判所はYの本件主張を時機に後れた攻撃防御方法(民事訴訟法157条1項)に当たるとして却下すべきではないか。以下ではその要件該当性について検討する。

(1)ア Yは本件主張を弁論準備手続内で行うべきであったのに,それをしなかったため,本件主張を「時機に後れて提出した」といえる。

イ 本件主張が認められた場合,これまで審理の対象とされてこなかった,Xが行った工事の内容が「契約の内容に適合しない」(民法632条,559条,563条,562条)といえるか,という点について新たに証拠調べ等を行う必要が生じる。本件訴訟では争点整理がすでになさているため,本件主張が訴訟を比較的に長期化させることは明らかである。よって,「これにより訴訟の完結を遅延させる」といえる。

ウ 請負代金減額請求の主張は,Yが当初より争っていた,Xの行った工事の中に注文外のものが含まれているために請負代金額がXの主張する額よりも低額であることとは別個の原因に基づくものであり,弁論準備手続終結後に判明したなど,特段の事情がない限りは,あらかじめ弁論準備手続の中で提出することが期待できた,また,提出すべきであった陳述といえる。

そして,Yは提出を弁論準備手続内で行わなかったことについて説明義務を果たさなかったため,そのような特段の事情は本問事案においては認められない

よって,Yは本件主張の提出において「重大な過失」があったといえる。

(2) したがって,Yの本件主張は時機に後れた攻撃防御方法としての要件をみたしている

4 以上より,裁判所はYの本件主張を時機に後れた攻撃防御方法に当たるとして却下すべきである

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