【Law Practice 民事訴訟法】22:訴訟手続の中断・受継

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【全体的にわからない問題でした……】

1 本件訴訟においては,第1審係属中に,日本政府がZ国との条約により,X国に代えてZ国を承認したという事情がある。この際に,当事者がX国からZ国へ変更したのか,それとも,当事者は当該「国家」であり,X国からZ国への代表権の移転があったにすぎないのかを検討する1当事者の確定基準が問題となる。

(1) 当事者は,人的裁判籍(民事訴訟法4条)の基礎となるため,出来るだけ早い段階で,明確な基準によって確定する必要がある。訴え提起時点においては,訴状の記載が明確な基準として存在しているため,基本的には,訴状の当時者欄の記載(民事訴訟法133条2項1号)を基準として当事者を確定させるべきである。

そして,その基準に加え,事案の実質的妥当性を図るべく,訴状における請求の趣旨及び原因(民事訴訟法133条2項2号)等をも客観的合理的に解釈した上で当事者を確定させるべきである。

(2) 本件訴訟の訴状に原告として記載された当事者は,X国である。もっとも,日本との関係では,X国は私人と同様の立場で訴訟を提起しているわけではなく,国家としての代表権を有する存在として訴訟を提起していると考えられる。それならば,本件訴訟における当事者は,「当時X国が支配していた領域にある国家」である。そして,その「国家」を訴訟開始時点においては,X国という主体が代表していた。

(3) このように捉えると,日本政府がX国に代わってZ国を承認した時点をもって,日本との関係においては,「当時X国が支配していた領域にある国家」を代表する主体はZ国に変更されたものと見るべきである。よって,この段階で本件訴訟において,X国からZ国への代表権の移転があったといえる

2 代表権の消滅は,相手方へ通知しなければ,その効力を生じない(民事訴訟法37条,36条1項)。X国の代表権は消滅したものの,X国は,相手方に対して通知を行っていないため,代表権消滅の効果は発生しないのではないか

(1) 民事訴訟法36条1項の趣旨は,代表権の消滅の事実を知ることができなかった相手方を保護する点にある。しかし,条約による代表権の消滅は,いわば公知の事実といえ,通知がなくても相手方を害しない。そこで,条約によって代表権が消滅した場合には,通知がなくても代表権消滅の効果は発生すると考える。

(2) 本問でも,代表権消滅の効果は発生する

3(1) 代表権の喪失があった場合には,訴訟手続は中断され,新たに代表権を有するに至った者に訴訟手続を受継しなければならない(民事訴訟法124条1項3号類推適用)。

(2) 本問でも,X国が本件訴訟において,「当時X国が支配していた領域」に関する代表権を失ったことを意味するため,訴訟手続は中断され,新たに代表権を有するに至ったZ国に訴訟手続を受継しなければならなかったといえる。しかし,本件訴訟では,裁判所はこの事実を斟酌することなく,第1審判決がなされるに至っている

4(1)ア そうだとしても,訴訟代理人がある場合には,訴訟手続の中断や,新当事者への受継は行う必要がない(民事訴訟法124条2項)。

イ 本件訴訟でも,訴訟代理人として,弁護士Bがいたため,訴訟手続を中断し,新当事者に受継する必要はないのが原則である。

(2)ア 民事訴訟法124条2項によって,中断,受継が要求されない趣旨は,訴訟代理人がもとの当事者と新しい当事者の利益を一貫して追求し,新当事者が訴訟手続に当事者として関与できなかったとしても,新当事者に対する手続保障が及ぶ点にある

イ しかし,X国とZ国とは,国家を形成する主体,組織,構造は異なり,当然,追求すべき利益も異なる。そのため,本件訴訟代理人である弁護士Bは,あくまでもX国を訴訟上代理するにすぎず,その訴訟追行によってZ国の利益を正しく追求できるとはいえない。そこで,手続保障が新当事者となるべきZ国にも及ぶとはいえないため,民事訴訟法124条2項の趣旨は及ばない

(3) よって,訴訟代理人として弁護士Bがいたものの,訴訟手続を中断し,新当事者に受継する必要があった

5(1) 以上より,日本政府がZ国との条約により,X国に代えてZ国を承認した時点以降は,訴訟手続を中断し,Z国への受継を経た上で,訴訟手続を行うべきであったのに,X国を当事者として訴訟手続を進行した点に瑕疵がある

(2) よって,控訴審裁判所は,訴訟手続の中断事由があったのにそれを看過して手続を続行したことが,124条1項3号に関する「判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある」として,原判決を破棄し,第1審へ差し戻し(民事訴訟法325条1項後段),中断事由が生じた時点に立ち戻ってZ国への受継をさせるべきである

Footnotes

  1. 当事者が変更していた場合には,訴訟承継の手続が必要?当事者の変更がなく,代表権の移転があったに過ぎない場合は,本文中の処理?

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