【Law Practice 民事訴訟法】基本問題24:証明責任

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1 Xは,Yに対し,賃貸借契約の解除を原因として,本件建物収去土地明渡請求を行っている。そして,控訴審の審理において,Yは,Xが信頼関係破壊を基礎付ける事実について主張立証していないため,解除が認められない旨を主張している。

2(1) ある事実の真偽が不明である場合には,その事実を要件とする法規は適用できないことになる。その結果,その事実について証明責任を負う側の当事者は,その効果発生が認められないという不利益を被る。

(2) Yの上記主張は,Xは,信頼関係の破壊について,証明責任を負うべきところ,それを基礎付ける事実について,何らの主張も行っていないため,信頼関係の破壊が認められないという不利益を被ることを意味している。この主張は,信頼関係破壊についての証明責任が,原告たる賃貸人Xにあるのであれば,正当である

3 それでは,信頼関係破壊については,XとYのいずれに証明責任があるのか証明責任の分配基準が問題となる。

(1) 証明責任は,法律要件をみたすか否かが不明な場合に,自己に有利な法律効果の発生が認められない不利益をいう。証明責任は,当事者に対しては,立証活動の指針を示し,裁判所に対しては,訴訟指揮の指針を与える。その性格上,事案に応じた柔軟な判断以上に,一定の明確かつ公平な基準性を有する必要がある。そのため,実体法の規定を判断の根底に据えるべきである。そこで,自己に有利な法律効果の発生を欲する側が,その効果発生を定める適用法条の要件事実について,証明責任を負うと考える。そして,自己に有利か否かは,実体法上の相互の論理的関係や,当事者の利益関係・公平性などを基礎として判断する

(2)ア 実体法上の論理的関係について

賃貸借契約において,賃借人が無断賃貸を行った場合には,原則として,解除権が発生する(民法612条2項)。しかし,賃借人の賃貸行為が背信的行為と見るべきでない特段の事情が存在する場合には,その解除権は発生しない(信頼関係破壊の法理)。

すなわち,信頼関係破壊に関する事情は,原則としての解除権発生に対して,その発生を障害する特段の事情に当たり,これは例外的な場合である。例外的事情である信頼関係の破壊がなかったことは,賃貸人の側が証明すべき事情である

イ 当事者間の利益関係・公平性について

信頼関係破壊に関する事情は,解除権の発生を障害する事情として機能する。それならば,この事実が証明されることによって利益を有するのは,賃借人の側であるといえる。そこで,賃借人に証明責任を負担させるのが公平,便宜に資する

(3) よって,信頼関係破壊については,賃借人であるYの側に証明責任があると考えられる。

4 以上より,Yの上記主張は認められない

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