【Law Practice 民事訴訟法】基本問題30:証拠保全

Law Practice 民事訴訟法
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1 証拠保全は,「あらかじめ証拠調べをしておかなければその証拠を使用することが困難となる事情があると認められるとき」にのみ,認められる(民事訴訟法234条)。それでは,本件では,上記要件がみたされるか医療訴訟において,上記要件をみたす事情として,どの水準の主張が必要かが問題となる。

(1)ア 証拠となりうる資料について,排他的に支配・管理できる状況は,改竄へ向けた誘惑的状況にあるため,抽象的ではあるものの改竄のおそれが認められ,上記要件が満たされるとする見解がある。

イ しかし,そのように捉えると,あらゆる場合に証拠保全が認められることとなり,上記要件の存在意義が失われうるし,また,証拠保全を申し立てられた側に過大な負担を課すこととなり,当事者の公平の観点から妥当性に欠く

そうだとしても,証拠の偏在を是正する手段としての証拠保全が有する役割を重視すべきであり,上記要件の充足は,比較的緩やかな水準で認められるべきである。

そこで,改竄のおそれを疑わせるような客観的かつ具体的な事情が,疎明に至る程度に主張されれば足りると考える。

(2)ア 医療行為を行っている中で死亡事故が生じた場合には,通常は,どのような状況で,何が死亡の原因と思われるかを具体的に説明した上で,真摯に患者の遺族への説明を行うものである。

イ しかし,Aの妻がAの手術を担当した執刀医に説明を求めたところ,従来より弱っていた心臓が止まったことが原因で,不可抗力が原因であると繰り返すのみであり,詳しい状況についての説明がAの妻に対して真摯に行われていない。この執刀医の態度にかんがみると,Yが改竄を行うおそれが客観的かつ具体的に認められる

2 Aの妻はその点を理由として証拠保全の申立てを行っており,その程度は一応確からしいという程度の心証を抱かせるものであり,疎明可能な程度に至っていると考えられる。よって,上記要件がみたされる

3 以上より,本件証拠保全は認められる

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