*本番に書いたものとの差は1割未満にとどまると思います。
*第1問に多くの時間を割いてしまったため,おそらくこの問題は40分程度で完成させたと思われます。
*なお,試験以降統治分野についてはまったく触れていないため,いまだに書いたことが合っているのか,筋違いなのかすら把握していません。その意味ではかえって信頼性の高い再現答案といえるかもしれません。
【再現答案構成(63点)】
1 付随的違憲審査制とは
・「法律上の争訟」(裁判所法3I)が対象=具体的な事件が前提
・裁判所が司法権を行使して,紛争を解決
2 付随的違憲審査制が採られている趣旨
(1) 権力分立(①)
・国会が定めた立法を一般的に審査すると,国会単独立法の原則(41I)を害する
・裁判所が実質的に立法権を担っているのと同視しうる
→だから抽象的違憲審査制ではなく,付随的違憲審査制が採られる
(2) 裁判所の事務処理上の便宜(②)
・法令を一般的に審査できるとすると,扱うべき案件が増えすぎる
→本当に吟味すべき事案に割くリソースが削られる
→最終的に,裁判の安定的かつ妥当な運営が阻害されるおそれ
3 本件法律はこの趣旨に反するのか
(1) 国会の各議院の申立てに基づく場合
ア ①の観点
・立法権の主体である国会が申し立てているため,立法権への侵害にはならない
・しかし,民主的基盤を欠く部分は否めないから,怪しいのでは?
→国会の申立て自体に民主的基盤を見出すならOK(?)
・両議院の申立てではなくて,「各議院」としているのは問題となる?
→立法権の主体ではあるし,国民の選任を経た議員の意思→OK
・司法に意見を求める,というような連携は,法制度の妥当性を維持する仕組みとして理想的ではある
・①の観点からは憲法上問題なさそう
イ ②の観点
・確かに純粋な付随的違憲審査制を採る場合よりも,扱うべき争訟の数は増える
・しかし,国会の各議院のみ,という限定の中で考えるなら,濫用的な申立てがされることは,考えづらい。
・②の観点からも憲法上問題なさそう
ウ 上記趣旨に反するとまではいいがたく,違憲とはいえない
(2) 内閣・地方公共団体の長の申立てに基づく場合
ア ①の観点
・内閣:行政権の主体→立法権への干渉を正当化する要素はないからNG
・内閣に関しては議院内閣制を採る以上,立法権と行政権との実質的な関わり合いが認められるから許容する可能性があるとしても,地方公共団体の長は法律に関与できる地位にはない
イ ②の観点
・内閣であれば,濫用的な申立てがなされるおそれは比較的小さいが……
・地方公共団体は数が多い→処理すべき事件の数は大幅に増える
ウ 上記趣旨に反するため,違憲
【再現答案】
*おそらく本番もこのように書いています。
1 付随的違憲審査制とは,「法律上の争訟」(裁判所法3I)を対象として,裁判所が司法権を行使して,紛争を解決する仕組みである。「法律上の争訟」とは,当事者間の具体的な権利義務や法律関係の存否に関する紛争であって,法の解釈・適用によって終局的に解決できるものをいう。よって,付随的違憲審査制は,裁判所が,具体的な事件の存在を前提としてはじめて,違憲審査に及ぶことができる仕組みといえる。
2 付随的違憲審査制が採られている趣旨としては,以下のとおりである。
(1) 権力分立(①)
国会が定めた立法を一般的に審査することは,国会が成立させた法律が憲法に反するかを,裁判所が積極的に審査することになり,国会単独立法の原則(41I),ないしは立法権を害する。
また,裁判所が実質的に立法権を担っているのと同視しうる以上,立法権への侵害となると言わざるを得ない。
その反面,具体的事件を前提とした場合には,これらの干渉を極力抑えた上で違憲審査が行える。よって,抽象的違憲審査制ではなく,付随的違憲審査制が採られるものといえる。
(2) 裁判所の事務処理上の便宜(②)
裁判所が法令を一般的に審査できるとした場合には,扱うべき案件が増えすぎてしまい,本当に吟味すべき事案に割く時間・費用が削られる。このことは,裁判の安定的かつ妥当な運営が阻害されるおそれにつながる。よって,具体的な事件を対象とするという限定を加えることにより,事務処理を効率よく行えるようにしているものと考えられる。
3 本件法律は,現行の付随的違憲審査制に対して,部分的に抽象的違憲審査制的な仕組みを導入するものである。それでは,この法律は,上記趣旨に反するのか。
(1) 国会の各議院の申立てに基づく場合
ア ①の観点
立法権の主体である国会が申し立てているため,立法権への侵害にはならないと考えられる。
裁判所による抽象的違憲判断は,民主的基盤を欠く部分は否めないが,国会の申立てを契機とする以上は,その部分に民主的基盤を見出せるため,問題ないと思われる。
また,両議院の申立てではなくて,「各議院」としていることが,立法権全体の委任に基づくものとは言えず,立法権の侵害となるとも考えられるが,各議院はそれぞれ独立して立法の過程を担っている以上,完全な立法権の主体といえる。また,国民の選任を経た議員の意思による審査である以上は,立法権を侵害するとはいいがたい。
さらに,国会の側から,司法機関である裁判所に意見を求める,というような連携は,法制度の妥当性を維持する仕組みとして理想的ではある。
よって,①の観点には反しない。
イ ②の観点
確かに,純粋な付随的違憲審査制を採る場合よりも,扱うべき争訟の数は増える部分は否めない。
しかし,申立てを行える主体を国会の各議院のみ,という限定の中で考えるなら,濫用的な申立てがされることは,考えづらい。
よって,②の観点には反しない。
ウ したがって,本件法律のうち,国会の各議院の申立てに基づき違憲審査が行えるとする部分は,上記趣旨に反するとまではいいがたく,違憲とはいえない。
(2) 内閣・地方公共団体の長の申立てに基づく場合
ア ①の観点
内閣に関しては議院内閣制を採る以上,立法権と行政権との実質的な同一性,同一と見られる程度の関わり合いが認められる。そこで,立法権に干渉することを許容する余地は見出しうる。しかし,地方公共団体の長は,法律に関与できる資格を有していないため,本件のような申立てを行うことは許されない。
そして,内閣は,行政権の主体である以上は,国会の各議院の場合と異なり,立法権への干渉を正当化することは権力分立に当たることは否定できない。そのため,申立てを行えるとする権限を認める正当性がない。
よって,①の観点に反する。
イ ②の観点
内閣であれば,申立てがなされる回数自体は比較的低いと考えられる。そこで,濫用的申立てを回避できるのであれば許容する余地がある。
しかし,地方公共団体は数が膨大である。そのため,処理すべき事件の数は大幅に増えるといえる。
よって,内閣に関しては,②の観点に反しない可能性があるが,地方公共団体に関しては,②の観点に反する。
ウ 以上より,本件法律において,内閣の長の申立てに基づき違憲審査を行えるとする部分は,上記趣旨①に反するため,違憲である。また,地方公共団体の長の申立てに基づき違憲審査を行えるとする部分は,上記趣旨①②に反するため違憲である。
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