【Law Practice 民事訴訟法】基本問題48:訴訟承継の効果

Law Practice 民事訴訟法
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第1 設問前段について

1 XがZに対して,XY間で係属している訴訟を引き受けさせるためには,Zが「訴訟の目的である義務の全部又は一部」,もしくは,「訴訟の目的である権利の全部又は一部」を承継している必要がある(民事訴訟法50条1項,51条)。Zについて,この事情は認められるか。いかなる者が訴訟承継人に該当するかが問題となる。

(1) 訴訟承継を認める必要性は,訴訟が係属している間に実体法上生じた,紛争の主体としての地位の承継を,訴訟手続においても反映させた上で,当該手続内で紛争の実効的な解決を図る点にある。

そこで,訴訟承継人とは,前主から紛争主体たる地位を承継した者をいう。

(2) Yは,本件土地の上に建物を所有していた。Xが本件土地を所有していたとすると,Yについてその土地の占有を正当化する事情が認められないときは,YはXに対して,建物収去土地明渡義務を負う

そして,Zは,Yから当該建物を譲り受けたため,Yと同様に,Xが本件土地を所有していた場合には,占有正権原の抗弁をXに提出できなければ,同様の義務を負う

そして,XはYに対して,当該義務の履行を求める訴訟を提起しているため,当該義務はまさに,本件訴訟の目的とされている義務に当たる

よって,ZはXとの関係で,前主であるYから紛争主体たる地位を承継した者といえる

(3) したがって,Zについて,「訴訟の目的である義務の全部又は一部」を承継したという事情が認められる

2 以上より,XはZに訴訟を引き受けさせることができる

第2 設問後段について

1 訴訟承継前に,YはXに対して,Xの土地所有権を認める旨の陳述を行っており,権利自白が成立している。Zは,本件訴訟を承継した以上,Yが行った権利自白の拘束力を受け,Xの所有権を争うことができないのではないか訴訟承継によって,訴訟状態を承認する義務が承継人に生じるかが問題となる。

(1) 訴訟承継があった場合に,相手方が前主と争った事項等について,後主が再び争うなどして,蒸返しを認めることは,相手方の既得的地位を害するし,再び審理する必要が生じることから,訴訟経済に反する。そのため,承継人に対して,前主によって生じた訴訟状態を承認させる必要性がある。

また,承継原因が生じるまでには,被承継人が訴訟の目的に対して最も密接な利害関係を有していたのであるから,代替的にとはいえ,手続保障が及んでいるといえる。

そこで,原則として,承継人は,承継の原因が生じた段階における訴訟状態を承認する義務が生じると考える。

(2) 本件でも,Zは被承継人Yが行った訴訟追行によって生じた訴訟状態としての権利自白を承認しなければならず,Xの本件土地所有権を争うことができないのが原則である。

2 もっとも,Yは本件土地の賃借権を主張できれば,Xによる建物収去土地明渡請求を拒むことができたのに対して,Zは,本件土地の賃借権の主張が認められても,YからZへの無断での賃借権の譲渡がある以上,Xに対して建物収去土地明渡請求を拒むことができない可能性がある(民法612条1項,2項)。

それならば,YとZでは,Xに対する争い方が異なる以上,Yが行った訴訟追行がZの手続保障をみたさず,訴訟状態承認義務を及ぼすべきではないのではないか

(1) 訴訟状態承認義務が正当化される根拠は,前主による手続保障が認められることにある。しかし,前主によって承継人の利益が十分に反映されていない場合には,手続保障が及んでいるとはいいがたく,訴訟状態承認義務を認める前提を欠く

そこで,上記特段の事情がある場合には,訴訟状態承認義務は,認められないと考える。

(2) 本件では,前述のとおり,YはXに対して,土地賃借権が認められれば,Xの請求を拒める反面,Zは,Yが行うような争い方では,Xの請求を拒むことは困難であるYとZでは,Xによる請求に対する争い方が異なり,前主Yによって承継人Zの利益が十分に反映されているとはいえない

よって,本件では,ZにはXY間の訴訟状態承認義務は認められない

3 以上より,ZはXの本件土地に関する所有権を争うことができる

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