【Law Practice 民事訴訟法】基本問題49:上訴の利益

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1 第一審において,Xの請求棄却判決が下されたため,Yは勝訴している。上訴を行うためには,上訴人に上訴の利益が認められる必要があるが,Yにはもはや上訴の利益はないのではないか上訴の利益の有無の判断基準が問題となる。

(1) 上訴の利益の判断においては,基準としての明確性が求められる。明確な指標としては,当事者の申立ての内容や,判決主文があり,それらを判断の考慮に入れることが妥当である3

また,全部勝訴の判決を得た者に対して,原判決に対する不服の主張を認めることは,訴訟の不必要な蒸返しを招来し,訴訟経済に反し,また,被上訴人の利益を害するため,妥当ではない。

そこで,上訴の利益は,当事者の申立てと原判決の主文とを比較した上で,後者が前者に及ばない場合にのみ,認められると考える。

(2)ア4 確かに,Yは,XY間に売買契約が存在したがために,XからYへの所有権移転登記がなされた旨を主張していた。それにもかかわらず,第1審判決では,売買契約ではなく,売渡担保である旨が基礎付けられたことから,Yの意思が十分に反映された判決にはなっておらず,上訴の利益を認めるべきとも思える。

しかし,その事情は,判決理由中の判断における問題にすぎず,判決主文でなされた判断に対する不服ではない。

イ 本件においては,原判決の主文は,「原告の請求を棄却する」というものであると考えられる。

原告であるXが行った請求の訴訟物は,XのYに対する本件山林の所有権移転登記手続請求権であり,判決主文において,当該請求権の不存在が示されたといえる。

Yの合理的意思にかんがみると,Y側の申立ても,当該請求権の不存在である。それならば,本件では,原判決の主文が当事者の申立ての内容を包含したものといえる。

(3) よって,Yに上訴の利益は認められない

2 以上より,第1審判決に対し,Yは請求棄却を求めて控訴を提起することはできない

Footnotes

  1. 規範を導く理由づけは,あまりLegal Questに載っていないように感じたので,割とオリジナルなところがあります。
  2. この「ア」の部分は,厳密にいえば,不必要なパートかと思われます。本文中の事情をなるべく多く拾うことを意識したため,この部分を設けるに至りました。
  3. 規範を導く理由づけは,あまりLegal Questに載っていないように感じたので,割とオリジナルなところがあります。
  4. この「ア」の部分は,厳密にいえば,不必要なパートかと思われます。本文中の事情をなるべく多く拾うことを意識したため,この部分を設けるに至りました。

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