【Law Practice 民事訴訟法】発展問題16:将来給付の増額請求 (確定判決の変更の訴え)

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1 前訴では,XのYに対する本件土地明渡しまでの不法行為に基づく賃料相当額の損害賠償請求権(民法709条)が存在する旨の判決が下されている。そのため,「主文に包含するもの」,すなわち,訴訟物たる権利関係としての当該請求権の存在について,既判力が生じている(民事訴訟法114条1項)。

Xは,後訴で改めて賃料相当額を月額50万円に変更する旨の内容を含めた上で,新たに主張する賃料相当額と,前訴で認容された額との差額を追加的に請求することとしている。ここで問題としている訴訟物は,前訴と同じく,不法行為に基づく賃料相当額の損害賠償請求権である。すなわち,前訴と後訴とは,問題としている訴訟物が同一であると考えられる。

それならば,本件後訴提起は,前訴既判力に抵触するとも考えられる。ここで,前訴既判力確定時以降に生じた事情変動に基づいた後訴提起は既判力によって遮断されるかが問題となる。

(1)ア 既判力の正当化根拠は,手続保障の充足にある。前訴基準事後に生じた事情に関しては,争う機会が与えられておらず,手続保障が及んでいない以上は,改めて争える機会を付与する必要性が認められる。

仮に争う機会を与えない場合には,前訴において予期していなかった事情変動を全面的に受忍せざるを得ず,当事者間の公平を失するといわざるをえない。

イ また,前訴基準時後に生じた事情変動は,前訴段階ではおよそ主張立証は不可能であった部分といえる。それならば,これを請求から除外する趣旨であることがある種明らかともいえる。

このように考えれば,前訴は明示的一部請求であったものと同視でき,その意味で,前訴と後訴とは訴訟物を異にすると捉えることができるため,後訴提起は前訴既判力に反することにはならず,許容される。

ウ そこで,前訴既判力確定時以降に生じた事情変動に基づいた後訴提起は既判力によって遮断されないと考える。

(2) 本件では,前訴既判力確定時である事実審口頭弁論終結時である2007年4月2日以降に生じた,本件土地の近郊に鉄道の駅ができたことにより,賃料相当額が上昇した,という事情変動を後訴提起の理由としている

よって,本件でも,後訴提起は前訴既判力によって遮断されない

2 以上より,本件後訴は,前訴判決の既判力との関係で許される

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