【事例演習 刑事訴訟法】24:伝聞法則②

事例演習 刑事訴訟法
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【今回は特に何も参照せず書いたので,所々にみだれがあります】

1 検察官は,Xを会社法違反罪で起訴した上で,Xが否認した,Sに対して金員を供与したことを証明しようとしている。この事実は,本件被疑事実の構成要件該当事実であるため,刑罰権の存否を画する事実である(刑事訴訟法335条1項)。よって,この事実の証明は,厳格な証明(刑事訴訟法317条)によって行う必要がある。すなわち,証拠として採用するためには,適式な証拠調べを経た上で,証拠能力が認められる必要がある。

2 本件領収書は,SがYに宛てて,1000万円を受け取った事実を記載した旨を記したものであることから,Sの供述を記した証拠といえる。そこで,本件領収書は,伝聞証拠(刑事訴訟法320条)に当たるとして証拠能力が否定されるのではないか伝聞証拠の意義が問題となる。

(1) 供述証拠は,知覚,記憶,表現,叙述という過程を経た上で生成される。しかし,その各過程には,誤りが介在する危険性があるため,反対尋問等の方法によって,その正確性を確認する必要がある。しかし,公判廷外でなされた証拠については,その正確性を確認することができない。誤った判断の危険性を避ける必要があるため,そのような証拠は,証拠能力を否定すべきである。

そこで,伝聞証拠とは,①公判廷外でなされた原供述を内容とするものであり,②原供述の内容の真実性を証明するために用いられるものをいう。

(2)ア 本件領収書は,公判廷外におけるSの供述を示したものである。

イ(ア) 確かに,本件領収書の内容の真実性を証明できれば,YからSへの金員供与の事実を証明することができるため,内容の真実性を証明するために用いられるともいえる。

(イ) しかし,領収書は,何らかの物の受渡しがあった場合に,その受渡しの事実があった事実を記録として残すために作成される書類である。この領収書の性質にかんがみると,領収書が存在していることそれ自体によって,記載された内容に従った物の受渡しがあったことを推認することができる。そして,検察官は要証事実を「本件領収書の存在と内容」としているため,本件領収書は,内容の真実性を証明するためではなく,存在それ自体によって事実を推認するために用いられるといえる。

ウ したがって,本件領収書は,伝聞証拠には当たらないため,証拠能力が否定されない

(3) 以上より,裁判所は,本件領収書を証拠として採用することができる

3 本件メモ紙は,Yの筆跡によるものであることから,Yの供述を記したものといえる。そこで,伝聞証拠(刑事訴訟法320条)に当たるとして証拠能力が否定されるのではないか

(1) 本件メモは,公判廷外におけるYの供述を示したものである。

(2)ア 確かに,本件メモ紙の内容の真実性を証明できれば,YからSへの金員供与の事実,XとのYとの共謀関係,を証明することができるため,内容の真実性を証明するために用いられるともいえる。

イ しかし,本件メモ紙にはYの筆跡が顕出されており,YがSに対して金員を供与した旨が記載されており,さらに,記載内容が,本件領収書の内容と一致しているメモ紙が,Xの職場内の鍵がかかったX使用の机の引き出しというXしか関与できないであろう領域から発見されたことは,XがYとの間で金銭供与につき共有すべき関係にあったことを推認する事実,すなわち,XとYとの間の共謀を推認する事実として機能する。よって,本件メモ紙の発見状況及び存在それ自体が検察官の証明の対象であるといえ,検察官は本件メモ紙の内容の真実性を証明するために証拠として用いるわけではない

ウ したがって,本件領収書は,伝聞証拠には当たらないため,証拠能力は否定されない

(3) 以上より,裁判所は,本件メモ紙を証拠として採用することができる

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