【事例演習 刑事訴訟法】33:攻防対象論

事例演習 刑事訴訟法
この記事は約2分で読めます。

1 本件においては,第一審裁判所は,有罪判決を下した。その内訳としては,甲罪と乙罪が含まれ,両者は観念的競合の関係にあった。第一審裁判所は,乙罪については,主文で有罪である旨を判示し,甲罪については,理由中で無罪である旨を判示した。

これに対し,被告人は控訴を申し立てたが,検察官は控訴を申し立てなかった。この場合には,甲罪に関して,控訴裁判所が職権調査を行い,有罪判決を下すことができないのではないか

一罪関係にある事実につき、有罪判決が下されているものの、理由中でその一部をなす訴因については無罪の判断が示されている場合に、被告人側しか控訴していないにもかかわらず、控訴裁判所の職権調査がその部分にも及ぶかが問題となる。

(1) 控訴審が事後審としての性質を有すること、当事者主義的訴訟構造が採られることにかんがみると、控訴審における職権調査は控訴を申し立てた範囲に限られるべきである。

そして,被告人側のみが控訴しており,検察官側が控訴していない場合には,一罪関係にある並列し、かつ、独立する,無罪の判断が下された部分については、検察官は攻防の対象から外す趣旨と考えるのが相当である。それならば,上記部分は申立ての範囲に含まれない

また,その部分についての職権調査を認め,有罪判決を下すことを許す場合には,被告人に対して不意打ちとなる

そこで,控訴裁判所の職権調査が上記部分には及ばないと考える。

(2) 本件においても,甲罪と乙罪は観念的競合の関係にあり,一罪関係にあり,甲罪は乙罪とは並列し,かつ独立する部分といえる。それならば,検察官が控訴を申し立てていない以上,控訴裁判所の職権調査は甲罪には及ばない。

2 以上より,本件において,控訴裁判所は,起訴事実の事実の全部について有罪とすることはできない

コメント

タイトルとURLをコピーしました